世界経済成長3%減、新型ウイルスのため「世界恐慌以降で最悪」 IMFの最新見通し

ズー・ピン・チャン、ビジネス記者(BBCニュース)

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画像提供, Getty Images

国際通貨基金(IMF)は14日、新たな世界経済見通しを発表し、新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年の経済成長率が前年比3%減になるとの予測を示した。各国経済が過去数十年で最も速いペースで縮小しており、1930年代の世界恐慌以来で最悪の景気後退に直面するという。

IMFは、新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)によって、世界が「他に類を見ない危機」に陥ったとしている。

また、アウトブレイク(流行)が長期化すれば、この危機を制御する各国政府や中央銀行の能力の限界が試されることになると付け加えた。

IMFのチーフエコノミストのギタ・ゴピナス氏は、世界経済の総生産が今後2年間で9兆ドル(約970兆円)減る可能性があると述べた。

「大規模なロックダウン」

IMFによる最新の世界経済見通しは、イギリス、ドイツ、日本、アメリカなど各国の「迅速かつ大規模な」対応を称賛する一方で、景気後退を免れる国はないだろうと指摘している。

もし2020年後半にパンデミックが終息した場合は、世界の経済成長率は2021年には5.8%に回復すると予測する。

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画像説明, 主要国はいずれも今年は景気後退に入るとIMFは予測する。棒グラフは各国の国内総生産予測。

ゴピナス氏は、「(新型ウイルスによる)ショックが続く期間や激しさの程度が、きわめて不透明」な中、現在の「大規模なロックダウン(都市封鎖)」は各国の政策決定者に「厳しい現実」を突きつけていると述べた。

「2021年には部分的な回復が見込まれる。しかし、国内総生産(GDP)の水準は、新型ウイルス以前の傾向を下回ったままで、どこまで力強く回復するかは不確実だ」

「経済成長はもっと悪い可能性があるし、おそらくそうなるだろう」

英は100年で最悪の景気後退

IMFはイギリスについて、今年1月時点ではGDP成長率の見通しを1.4%としていた。しかし今回、2020年に6.5%縮小と大幅に下方修正した。

これほどの落ち込みは、2007~2008年の金融危機後に生産高が4.2%落ち込んだ時より大きいものになる。

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画像説明, 一部の国では2007~2008年の金融危機後よりも失業率が悪化するおそれがある

18世紀までさかのぼって復元されたイングランド銀行のデータによると、1921年以降で最大の年率低下だという。

一方、イギリスの予算責任局(OBR)は、6月までの3カ月間でGDPが35%も低下するとみている。

ロックダウンの実施中、労働者の雇用維持を目的としたイギリスの一時帰休制度によって、2020年の失業率は4.8%に抑えられる予想。昨年の失業率は3.8%だった。

リシ・スーナク財務相は、労働者や企業がこの封鎖状態を乗り切れるよう、数十億ポンド規模の賃金補助や融資保証を約束している。

イングランド銀行もまた、金利を過去最低にまで引き下げ、市中銀行の融資用に数十億ポンドを利用可能にした。

世界的な苦しみ

ゴピナス氏は、先進国も途上国も一度に景気後退に陥るという予測は、1929年の世界大恐慌以来、初めてだと指摘した。

IMFは経済先進国の成長について、新型ウイルス以前のピーク水準に戻るのは年に早くても2022年だと警告した。

アメリカ経済は、2020年に5.9%縮小する見通しで、年間の減少率としては1946年以降で最大。アメリカの失業率も今年は10.4%に跳ね上がる見通し。

2021年のアメリカの予測成長率は4.7%で、部分的な経済回復が見込まれている。

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画像説明, 新興国の成長率見通し。中国は1967年以来最低の1.2%と予想される

中国の経済成長率は、今年はわずか1.2%で1976年以降の最低水準にとどまる見通し。

オーストラリアは1991年以降初の景気後退に見舞われると予測される。

IMFは、「さらにひどい結果になるリスクは深刻だ」と警告。パンデミック制御にさらに時間がかかり、2021年に感染拡大の第2派が発生した場合、世界のGDPはさらに8ポイント減少するとしている。この場合は、重債務国で下方スパイラルを引き起こす可能性があるという。

投資家がこうした国の一部への融資に消極的になり、借入コストが上昇する可能性があるとIMFは指摘している。

IMFはさらに、「公的債務の借り入れコスト増大や、単に増大するのではないかという懸念だけを受けて、各国は債務国支援を渋る可能性がある」と付け足した。

医療経済

ロックダウンの長期化は経済活動を制約するが、IMFは「新型ウイルスの感染拡大のスピードを遅らせ、医療システムが対応できるようにし、より早期の、より強固な経済活動の再開への道を切り開くには、封じ込めの先行措置が不可欠」だとし、隔離や社会的距離などの措置は重要だと述べた。

「感染拡大を遅らせて各国の医療体制に対応の猶予を与えるため、真正面から防疫体制をとることが何より不可欠だ。そうすることで、経済活動はより早く、よりたくましく再開できるようになる」

「社会的距離を取らないせいで感染がさらに拡大するというシナリオでは、サービス業への不確実性や需要減少はさらに悪化するおそれがある」

IMFはパンデミックに対処するため、4つの優先事項を明示した。

4つの優先事項とは、(1)医療システムへの追加資金提供、(2)労働者や企業への資金援助、(3)中央銀行による継続的支援、(4)経済回復への明確な出口戦略。

IMFはさらに、治療法やワクチンを開発し提供するために協力しあうよう、世界に求めた。

さらに、多くの発展途上国が今後数カ月や数年の間に、債務免除を必要とするだろうと付け加えた。

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